梨の礫
コージーコーナー ケーキの箱を片手に各停のサラリーマン
コージーコーナー ケーキの箱は一体誰と開けるの
私、物分かりのいい女 置いてった歯ブラシが
見えないところに隠れてても気付かないふりで
私、物分かりのいい女 クレイジングオイルが
見えないところに隠れてても傷付かないふりで
君の一部になりたかった、生まれ変わったら家族に
恋人や結婚なんかじゃなくて血で繋がりたいな
大好きなあの人の髪をかきあげる仕草も
一緒に住んでたあの人の少し傲慢なところも
許してあげられればよかったな、私が許せればな
なにを守ってなにを捨てるの、生きて行くために
私を救うものはなんだろう
私を救う者はなんだろう
目に見えるものだけに捉われた、本当は見えないのに
私の幸せってなんだろう
私の幸せってなんだろう
ベッドの中にもその腕の中にもどこにもなかった
本気になった私が馬鹿だった あなたの暇潰しを
本気にした私が馬鹿だった、抱きしめられたぐらいで
本気になった私が馬鹿だった あなたの暇潰しを
本気にしたわたしが馬鹿だった、一度抱かれたぐらいで
コージーコーナー ケーキの箱を片手に各停のサラリーマン
コージーコーナー ケーキの箱は一体誰と開けるの
コージーコーナー ケーキの箱は私と開けてよ
各停を選んだサラリーマン
コージーコーナー ケーキの箱は私が開けるの
水商売
1セット6000円の愛、ドアを開ければ広がるファンタジー
おやじの太ももに手を添えて初めましてって笑う
パーティードレス身に纏った20歳の私は
今夜も生きてくために愛情を売ってる
汚いおやじがたくさん触った、でも家に帰れば君が
ふたりのベッドを半分開けて私の帰りを待ってるから
君が同じかそれ以上に私に触ってくれたなら
それだけでよかった、それだけで綺麗になる気がした
東京は嫌いだ、人混みに飲まれて
ラブホテルのネオン街並んで歩く
東京は嫌いだ、人混みに飲まれて
私だけを愛せればよかったのにね
都合のいい女だったでしょ?
ペアリングもペアルックもなにもなかった
私たちはなにで繋がっていたの?
なにで繋がっていたの?
愛情とか同棲とかそういうもの以外で
人が人として扱われないこの仕事のなかで
喜怒哀楽を失って感情も売り飛ばして
私が私じゃなくなってく 私が私を殺してく
分かってよ、分かってよ、つらいのは君だけじゃない
東京は嫌いだ
東京なんか嫌いだ
1セット6000円の愛、ドアを開ければ広がるファンタジー
ヨレヨレのスーツのおやじに今夜も肩を抱かれて
寂しそうな顔で手を振る男たちに
なにも悟られないように笑って同情した
2015
バンドマンだから浮気ぐらい許してあげたかったんだよ
その「愛してる」がどこまで本気かは知らないけど
この部屋はふたりで暮らすには狭すぎたね
このベッドはふたりで寝るには狭すぎたね
毎日同じことの繰り返し似たような音楽と似たような生活
恋人とは似たような会話を繰り返して
ごめんねとありがとうも言えなくなった
そんな大人にはだけはなりたくなかった
美味しくもないコンビニ弁当で夕飯を済ませるような
大人にだけは、なりたくなかった
私だって人を愛した、私だってセックスもした
あの日、あの時、あの人に、
体だって売ったのにどうして?
私の価値が見出せない、値段がつかないと見出せない
商売道具だったセックスで愛を確かめるようになっちゃった
普通の人と普通に幸せになりたかった
その為にはまず私が普通である必要があった
でも普通ってなんのことか誰も教えてくれなかったじゃん
普通になったらステージに立っちゃいけないのかな
普通になったらギターを掻き鳴らしちゃいけないの?
時々許せなくなるんだ
そのデカい態度もテレビの音も
君が大きく掲げているその絶対的な正義も
武器をギターに持ち替えてこの人差し指で音を出したら
君との喧嘩が音楽に変わった!変な話だね
いつかは子供の手を引いて旦那のツアーファイナルに行く
関係者席でちょっと遠目で「あれがパパだよ」
とか言いながら楽屋挨拶、子供が飛びつく
「パパおかえり」って笑ってた
「もうどこにも行かないで」って言った子供を抱きしめる
せーの!
音楽は戦争だ、音楽は戦争だ、音楽は戦争だ
彼はギターで戦場に行く
音楽は戦争だ、音楽は、戦争だ
私の生まれたこの国で
武器なんか捨てて音を鳴らして
中央線
耳が聞こえない女子高生
私の命をあげるから精一杯生きてね
もう飛び降りたりしないで
日本語を知らない女の子
私の言葉をあげるから誰かを救ってあげてね
その可能性のある右手で音を鳴らして
中央線、私の背中を押して
きみが生きてることを確かめたかった
私で感じてほしかった、私で感じて
女としての幸せと大好きな音楽を
両立することが出来なかった
私は崩れた、あいつに崩された、それでも
私が大人になるしかないんだ
あの人は大人になれないから
私が大人になるしかないんだ
あいつは大人になれないから
歌をうたうの、音を鳴らすの
中央線、私の背中を押して
十四歳Ⅲ
14で見つけたピンク色の愛情は私に生活を与えた
14で見つけたピンク色の愛情は私を少女のままにした
そこにはニルバーナのポスターと水煙草の残骸がひとつ
壁一面のレコードと注射器の残骸がひとつ
揺れる揺れる部屋の隅の方きみの好きな音楽が鳴る
でもそれだけでは足りないと注射器の針を私に向けた
14で見つけたピンク色の愛情は私に戦争を教えた
14で見つけたピンク色の愛情は
「殴られることが愛だ」と言う
そこにはニルバーナのポスターと水煙草の残骸がひとつ
壁一面のレコードと注射器の残骸がひとつ
セックスばっかのあの頃をきみはギターで掻き鳴らす
でもそれだけでは足りないと注射器の針を私に刺した
犯行声明
覚醒剤なんかなくたってここならいつも気持ちよくなれた
14歳のときの悪い遊びは全部なかったことにして
私は新しい人生を歩き始める
大人になったらなんでも出来ると思ってた
14歳のときに欲しかったものなんて大人になったらすぐ買えると思ってた
大人になるにつれて欲しいものの単価があがった
やりたいことの規模が大きくなった
あの頃は海に行きたいとかバーベキューがしたいとか
そんなのばっかりだったけど今はもう、
車が欲しいとか結婚したいとか子供が欲しいとか
そう簡単に手に入らないものばっかになっちゃったね
少し頑張れば買えるものもあるし
ほんとうはいまでもバーベキューはしたいけど
ずっとだれかに復讐することをパワーにしてきた
いつもだれかのことが嫌いだった今でも
憎しみだけが私のなかに積もっていくから出していかなきゃいけなかった
だれかに分かってもらいたかったわけじゃなくて
これはただの憎しみの放出だった
だから私のライブはオナニーだと言われた
でもブログに書いてもツイッターに書いても
聞いてもらえなかったことが
うたにしたらみんながきいてくれた
私の言葉を理解しようとしてくれていた
だれかに復讐したくてうたをつくっていたし
私を捨てたあの男がいつかわたしのうたをきいて
苦しむほどに後悔しろって思ってるから
昔は嫌われることがぜんぜん怖くなかったし
2ちゃんねるで話題になれば勝ちってなぜか思ってた
でも今は、だれかに嫌われるのも
見捨てられるのもこわくてなにもできない
ほんとうは服もギターも邪魔なのに
もうここにくるなって言われるのがこわくて
自由を表現することに責任を感じるようになった
ほんとうにやりたいことってなんだったんだろう
私が音楽を始めた理由ってなんだったんだっけ
私っぽいっていうジャンルが確立した
私はいつだってそれを超えていかなきゃいけなかった
上にあがるということはそういうことか
人に評価されて幻滅されるということか
私はだれかに良し悪し点数をつけられるために
うたをうたっているわけではないし
もっと言えばこれはおまえたちを
えもくさせるための音楽ではない
うたがへただから有名になれない?
ふざけるな、私とお前を一緒にするなよ
売れなかった先輩
そんな大人が、なにがロックンロールだ
誰かのために生きるのも誰かのためにうたうのも
私の性にはあわなかったみたいだ
ハイランダースが有名になって
あの時の気持ちはもう忘れちゃったのかな
あの時のアメリカンチェリーの味はもう忘れちゃったのかな
わたしの3日後に生まれたあの人は
誕生日おめでとうのラインにも返信しなくなったね
わたしに音楽を教えた人が責任をとってくれなくなった
大好きなバンド、セバスチャンXの未成年といううたは
わたしの14歳そのものだった
「少年よ、優しくなんてなるな穏やかになんてなるな
剣のような瞳で 氷のような素肌で
優しくなんてならないで 君はきっと変わってしまう
口移しで食べたチェリー、忘れないでいて」
私にエスタロンモカを教えた人
病名がついたからきみとにらめっこ
子供が出来ない病気の私は
メジャーデビューや全国流通なんかより
なにより子供が欲しかった
子供が出来て音楽を辞めた先輩が私に言った
「ひとみちゃんはいいね、好きなように音楽が出来てていいね」
私の苦しみも知らずに
子供が産めていいねって言おうとしたけど
言わないでやめた喧嘩になると思ったから
子供が出来ない病気の私の気持ちが誰かに分かるはずがない
私がこんなに愛した人
子供が出来ない私だけど愛して
病名がついたから友達が減った
境界線が引けない病気のわたしは助けてって言えない
本当はこんな薬もう飲みたくないのに
こんなものに頼らなきゃ生きていけない
弱い自分が恥ずかしくて泣いた
苦しみを知らない子供のままで
生きていけたらよかったのにね
私にエスタロンモカを教えた人
あの人が死んだら迎えに行くね
スワロウテイル
六歳ぐらいの女の子が長く伸ばした髪を結いて
ひとり、おままごとをやっている狭いトイレの中で
一羽、アゲハを見つけたよ
捕まえたくて手を伸ばした
「ねぇ、見て、綺麗でしょう」ってママを呼んだら
いつも叱られた
わたしのママは売春婦、この街一番の売春婦
ママに値段がつくの
わたしのママが死んだ朝に娼婦たちは泣いて燃やした
死んだ理由も彼女の名前もなにも知らないと嘘ついた
わたしのママは売春婦
ママの名前はもう呼ばない
わたしはわたしの二本の足で
この廃れた東京で生きていくから
バンドマンの彼女
どこにも行かないでね、私の隣にいてね
あの日の結婚の約束はただの紙切れ一枚で
煙草の熱で燃やして捨てた
ふたりの愛情と共に
あの日のきみへの気持ちはただのお酒の勢いで
ホルマリンに漬けて捨てた
瓶のなかに詰め込んだ
どこにも行かないでね、つぎはどこへ行くのかな
聞いてもきっと答えは同じ
アラスカに行って帰ってくる
ふたり初めてのデートは近くも遠くもない歩幅で
都会の少し端っこで同じものを食べたのに
きみの頭のなかに私はどこにも見つからない
私と音楽どっちをとるのって
聞かないように食いしばる
そんなことを聞かなくちゃきみとの愛を信じられない
きみの右手は答えずに古いCDを漁りだす
そんなことを聞かなくちゃきみとの未来を描けない
揺れる部屋の隅っこで流れる音楽を憎んだ
どこにも行かないでね、私を置いて行かないでね
いつかは家族になろうね
どこにも行かないから最後はここに帰ってきてね
どこにも行けないから帰る場所はここしかないから
明日は婚姻届を出しに行く日
あなたはわたしを何度抱いても
あなたはわたしと家族にはならないの
あなたはわたしにこどもができたら
あなたはわたしと家族になれるの?
わたしとあなたの心の距離を
いつかは許してあげられるかしら
愛してるの愛してるの愛してるのよ毎日を
愛してるの愛してるの愛してるのよあなたを
わたしはあなたに何度抱かれても
わたしはあなたを許せないの
わたしはあなたに何度抱かれても
わたしとあなたは家族にはなれないの
あなたはわたしの心の痛みを
いつかは分かってくれるのかしら
わたしとあなたの心の距離を
いつかは許してあげられるかしら
生きていくの生きていくの生きていくのよこの街で
わたしはひとりでも生きていくの
17歳
大事なものが多すぎたな
手のひらから溢れるものが多すぎたな
守れないものが多すぎたな
守れずに壊してしまうものが多すぎたな
誰かのために生きるなんて
誰かのためにうたをうたうなんて
わたしはわたしの言葉を繋いで
武器にしてひとりで闘ってきたのに
もう17歳じゃないからコンドームだってつけなくなった
もう17歳じゃないから守れるようになったな
もう17歳じゃないからコンドームだってつけなくなった
もうあの頃みたいに誰かを愛せないな
こうやって大人になってきた
こうやって大人になってきた
こうやってわたしはわたしと闘ってきたのに
こうやってわたしはわたしを守ってきたのに
誰かのために生きてきたあなたの
誰かを愛して生きてきたあなたの
憂いばかりの4年間は
きっといつかあなたの力になっていくでしょう
大人になった二泊三日の恋人ごっこ
今夜は何時に帰るかしら
夕飯は一緒に、あなたのつくった
この世で一番おいしいよくしゅんだ煮物を
逢瀬
束の間の青春 ふたりの秘密
景色も天気も違うけれど
わたしとあなたの愛の大きさ
きっと同じだったと信じている
ずっとふたりだけの秘密だから
誰にも知られずに終わるから
強く抱きしめていてね、今夜だけは
理性なんか守らなくていいよね
今だけは我慢なんかしないでいてね
強く抱きしめていてね、お願い今夜だけは
わたしたちはふたりの秘密
わたしたちは結ばれない
わたしたちはふたりの秘密
わたしとあなたの青春ごっこ
二泊三日の大恋愛も あなたと囲んだ食卓も
お揃いのリュックで出かけたりして
あの時だけはちゃんと恋人だったよね
あなたとふたりで見た映画も
おいしいあなたの手料理も
普段は見せない弱いところも
寂しくなったら思い出すね
怒らないで聞いてね
あなたのことが本当に大切だっただけなの
怒らないで聞いてね
あなたのことを本当に愛していただけなの
あたたかい音楽や映画や
手料理や人としての優しさを
わたしに教えてくれたひとは
東京のひとではありませんでした
束の間の青春、ふたりの秘密
景色も天気も違うけれど
いつも背中を押してくれるあなただから
いつかまた抱きしめてね
おきにいりを さがして
無題
六畳一間のあの部屋で 何度私を抱いたの
テレビのないあの部屋で 何度女を抱いたの
許してあげるわ 許してあげるわ
私の使うソファーの上で 何度女を抱いたの
あなたの携帯のその中にどんな秘密が隠れているの
許してあげるわ 許してあげるわ
タイトル未定
平日の午後、電車に乗って
あの街もあの街もあの街も通り過ぎて
私は家に帰る 私は家に帰る
うまれたばかりの命を抱きしめて
絶望も希望も全部見せてあげる
東京で出会って失った
本当に大切なものは壊れてしまった
この窓から見えるものだけが人生だ
愛なんて笑わせるわ 優しくしてね
私の屍体がめちゃくちゃに燃やされても
あなただけは抱きしめてね
世界は広いだなんてあの子は嘘つきだ
音は鳴り止むことをしらず伝っていくのに
世界は狭いだなんてあなたは嘘つきだ
目に見えるものだけが全てじゃないのに
平日の午後、電車に乗って
あの駅もあの駅もあの駅も通り過ぎた
あなたの街まで あなたの街まで
この窓から見えるものだけが人生だ
愛なんて笑わせるわ 一夜限りで
東京で出会って失った
本当は愛してくれてなかったのわかってるよ
会いたいって言ったら会える距離に
いたとしたらどうなってたのかな